建築を多少でも志した者ならその名を聞いたことがある「伊豆の長八」。
漆喰鏝絵の名工である。伊豆には長八美術館が建てられており、代表作品約七十点が展示されている。
しかし、横須賀の浦賀にも「伊豆の長八」にも勝るとも劣らない漆喰鏝絵職人の
作品があるのを知ったのは最近のことである。
その左官職人とは石川善吉とその息子・梅尾である。
江戸末期から明治にかけて浦賀は回船問屋が多く、土蔵造りが盛んで漆喰壁を塗る左官職人も多かった。
名人、伊豆の長八、三浦の善吉とまでいわれ、全国に知られていたという。
これはまったく知らなかった。恥ずかしいことである。そして猛烈に観たくなった。
で、浦賀の鏝絵巡りと相成った次第である。
西叶神社の見事な彫刻
安房の彫刻師「後藤利兵衛」の作品
西叶神社:拝殿軒裏の格子(こうし)天井
当時日本には渡来していない花や鳥も彫られているという
西叶神社:棟を担ぐ力士像
西叶神社:社務所玄関上部の鏝絵
石川善吉の作、右側一面には松の木に登って水瓶の中を覗き見る童子、
左一面には水瓶を割る童子、割れた水瓶から流れる水の中から童子が覗かせ、
助けられた一瞬の出来事を表現している。
東福寺
岩田辰之助 本堂上部の外壁に「鶴・竜・虎・飛天」など8点の鏝絵装飾。
そして浦賀は蔵の街でもある。
川間町内会館
石川梅尾
1階軒下に「松竹梅と鶴亀」2階軒下の「鳳凰」
この「鳳凰」の漆喰鏝絵装飾は見事としか言いようがない。
これは芸術である。

大六天榊神社
石川善吉 正面両側の戸袋に描かれた「昇り竜・降り竜」
「浦賀の渡し」で東浦賀に渡る。
大人150円也。
法幢寺
岩田辰之助・徳太郎兄弟 本堂正面の外壁に描かれた「魔除けの神獣・唐獅子」
八雲神社
石川善吉 「向拝の竜」
彫刻と見間違うほどの迫力。これが鏝絵装飾の真髄である。
浦賀には小粒ながら古建築の宝庫であると実感。
幕末から明治・大正・昭和の激動の時代と共に生きてきた街である。
いたる所に古式ゆかしき面影が漂う建築が点在している。
それにしても西叶神社の彫刻と川間町内会館の「鳳凰」の鏝絵には圧倒された。
地元、横須賀にこんな素晴しい建築が人知れず(ワシが知らなかっただけだが)残っていたとは驚いた。
漆喰(しっくい)芸術の真髄を堪能できた素晴しき一日なり。
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