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2008年10月21日 (火)

国のない男

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国のない男 (単行本)
カート・ヴォネガット (著), 金原 瑞人 (翻訳)

偉大なる現代の“アメリカの良心”であるカート・ヴォネガットの遺作である。

最近のアメリカの高校生の間ではサリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」よりもカート・ヴォネガットの「スローターハウス5」の方が支持が多いという。
そんなコラムを以前読んで彼の名前は知っていたが作品を読む機会はなかった。

そして、彼が去年の4月に亡くなっていたというのも最近知った。
その彼の遺作である「国のない男 」。160ページにも満たない厚さ2cmの単行本。
普通なら一日で読んでしまうのだが、読み終わるまで1週間かかった。
一字一句心に刻むように読む。

危うい状態である宇宙船「地球号」。それに乗り込んでいる我々の将来は?
狂気の沙汰のアメリカを憂い、唯一の救いは音楽だと訴える。

彼の静かな“心の叫び”が次第に隙間から心に入り込み共振しやがて震えだす。

昔は良かった。エイブラハム・リンカーンがいてマーク・トゥエインがいた。
彼らの言葉に耳を傾けるだけで穏やかになれた。
でも古き良きアメリカを懐古するのはやめよう。
実際の危機はすぐ目の前にあるのだから。

アイロニックにこき下ろしても行間からは優しさが漂ってくる。
目の前の危機を“優しさ”というオブラートに包んで我々を諭す。
それしか出来なかった彼のもどかしさ、ジレンマが少しだけ分かったような気がした。

彼の意思を継いで行動するのは我々である。

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