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2007年10月11日 (木)

灰色の北壁

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灰色の北壁 (単行本)
真保 裕一 (著)

真保 裕一の「山」をテーマとした3編を収録した中篇山岳小説である。
中篇ならではのヒネリを効かしたミステリー仕立ての展開は小気味良い。
何よりも山に取り付かれた「山屋」の心情をよく理解しており、一人の人間としての「山屋」の心の襞(ひだ)にある想いを描いている。

読むにつれて、次第に主人公である「山屋」の想いに自分の心がシンクロしてしまう。
実はワタクシも若き頃、とある山岳団体に所属しており、春夏秋冬問わず、谷川岳、南アルプスや北アルプスに入り浸った時期があり、登場する「山屋」の心境にはある程度は分かる、がそこまでの「山屋」でもなかったし、卓越したアルピニストでもなかった。

山をやっていた関係で山岳モノの本は多数読み、特に新田次郎の作品は全て読んだ。
山を登るというひどく単純な行為が、時には生死を賭けた挑戦となり、そして物語となる。
想像を絶した大自然の中では人間は小さなものであり、その大自然の中でもがき苦しむのは当たり前である。だからドラマがあり感動があるのか。

そんな問い掛けを超越するほどストーリーは粛々と進んでいく。
なんだかこの潔さがこの小説の骨頂なのだろうと、読み終わってから気付いた。
やはり、この小説は山を登り切った者でしか分かり合えない何かがあるのかもしれない。
しかし、登山の経験者のない人には山の持つ奥深さが読み取れるのではないだろうか。

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